・目次
・会社名 登場人物名は仮のものです
・この話はフィクションです
実在のものとは一切関係ありません たぶん
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【営業三日目】
前回記事で暗雲立ち込めてきたと書いたけど。
文字通り。
僕
「中村さん……今日雨ですよね」
中村さん
「ああ。さっきから、
止んだり降ったりしてるけど、
傘は手放せないな」
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僕がこれまで勤めた仕事は、
全て、屋根のある場所での勤務。
こんな一日中外にいるような仕事で、
雨が降るのは初経験。
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「こういう場合どうするんですか?」
「だいたいは、
集合住宅に行ったりすることにしてるな。
濡れないで済むっていうメリットがある。
まあ何日も雨が続いたら、諦めて普通に訪問するけどな
でも今日は団地に行こう」
「そうですね!効率も良いし!
でも、なんでいつもは行かないですか」
「ああ……。行けばわかるけど。
一軒家よりもぜんぜん話を聞いてくれないんだ。
流れ作業で断られ続けるんだよ。
結局訪問営業はみんな同じこと考えてるから。
あと、最初から立ち入り禁止のオートロックも多いしな
よし!じゃあ今日は手分けしていこう。
A棟とB棟は俺で、yosi君はC棟とD棟な。
おれは左端から始めるんで、右端からやってくれ。
後で合流しよう」
というわけで早くも独り立ち。
>>早送り>>
数時間後。
昼ごはんは屋根のある集合住宅の一階で
座り込んでコンビニ食。完全に不審者。
「確かにぜんぜん話を聞いてくれませんね…」
「そうだろう。くじけてくるんだよ」
「でも、ちょっと話を聞いてくれそうな人もいて、
後で来てくれって言われてるんで、
中村さん、ちょっとやってもらっていいですか?
二人います」
「そうか~。じゃあEFGH棟終わったら、
ちょっと戻ってくるか」
さらに>>早送り>>
「すごいですね~。
結局、電話とADSLも取って、
フルコースですね」
「ああ、ADSLはうちの会社に乗り換えてくれたし。
息子さんがちょうど帰って来てよかったよ。
親は全然分かってなかったし」
僕が取れずに保留していたものも、無事中村さんが獲得。
「16時か……ちょっと早いけど帰るか」
中村さんはすでに6件獲得してる。
僕はゼロ。
「あ、ちょっと待ってくれ。
あれ同業者だよな……。
ちょっと声かけてくる!」
え?え?どういうこと?
スーツは着て無く作業服っぽいけど。
あ、訪問営業の同業者ってことか!
僕も付いていくことにした。
「俺?布団の訪問販売やってんだけど」
続く。