・目次
・会社名 登場人物名は一部仮のものです
・この話はフィクションです
実在のものとは一切関係ないという建前です
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【勤務10日目営業中 午後3~4時】
……………。
やっと一件目が獲得できると思ったのに…。
さすがに諦められない。
説得を試みる。
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「でも……やっぱり……」
…………ここで気付いた。
「僕、押し売りじゃないか?」
そのとおりだ。
結局この会社の仕組みだと、
お客さんの意思なんて関係なしに、
とにかく契約を獲って、結果を残したものが正しいんだ。
過程なんかは関係ない。
僕が中村さんを尊敬していたのは、
全てお客さんが納得済みで契約していたことだけど。
結局は門間さんのように、
「自分の利益のために、
契約を強いる」事になってしまう。
どうしたってそうなるんだ。
この若奥様は気弱ないい人だ。
・強引に契約を強いる
・若奥様のために退く
2択。
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退いた。
何でもいいから1件獲るという自己満足よりも、
相手の意思を尊重するということを優先した。
そして、若奥様に、
全てを話すことにした。
「こんな契約しなくていいです。
大事なのは必要だったら契約することで、
疑問に感じたらしなくていいんです。
私はもうこの仕事辞めます。
結局、押し売りになってしまうし、
こんな長い時間付き合ってくれて感謝してます。
あなたが最初で最後の、
私の大事なお客さんです。
本当にありがとうございます!
でも奥さん、
本当にあなたの家はメリットがあるから、
その気になったら改めて、
自分の意思で契約してください。
パンフレット置いておきます。
もう、訪問販売なんかにのせられちゃだめですよ!」
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奥さんとはその後、
小一時間話し込んだ。
「どうも。色々ありがとうございます。
次の仕事、がんばってくださいね、
応援してます…」
ありがとう。
契約は獲れなかったけど、
自分の営業で契約しようと思ってくれた人がいて、
その人にもっとも理想的な電話契約を提案できた。
満足だ。
もうこの仕事で思い残すことは無い。
今日で辞めよう。
続く。