・目次
・会社名 登場人物名は一部仮のものです
・この話はフィクションです
実在のものとは一切関係ないという建前です
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【勤務10日目営業中 午後2~3時】
20代の美人おしとやか奥様に、
玄関口まで入れてもらった僕。
これはどう考えてもチャンス。
契約獲得!
契約獲得!
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僕の営業スタイルは、
前のPCショップから一貫して変わってない。
《声を掛けて簡単にメリットを話し、
その後デメリットを詳しく案内し、
最後にひたすらメリットをアピールし契約まで押し切る》
○×◎という順番。
この営業の長所は、
きちんとデメリットを話してるから、
誤解によるキャンセルが少ないこと。
短所はもちろん、
「そもそもデメリットを詳しく話してる時点で、
契約をしてくれない」ということ。
僕はこのとき、
成功体験があったのがまずかったんだろう。
前うまくいってたから、それを変えることが出来なかった。
しかしそれは2008年の今だからこそ良くわかること。
当時は、自分なりに精一杯だった。
そしてこのときも、
スタイルを変えずに営業してた。
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「分かりました。
契約します…」
デメリットの説明を終え、
ひたすらメリットをおススメし続けた。
この若奥様の家の場合、
特にネットも入って無いし、
話を聞く限り問題になりそうな点も無い。
僕も必死だ。
そしてその熱意が通じた。
遂に初契約!
………初めてなんで、
どうすればいいかよくわからない………。
初日の方は中村さんの契約をいくつも見てきたけど、
この一週間は一人での訪問営業で、
正直忘れた。
若奥様に断り、
中村さんに連絡。
「え!獲得できたんだ!
おめでとう!
で、流れだけど……」
流れとしては三つ。
・直収電話の契約用紙の、
重要な部分にサインをもらう。
・10個ほどの注意書きがある別紙を簡単に読み上げ、
全部自分でチェックマークを入れて、最後にサインをもらう。
・イッパ・クレストの本社に連絡し、
本社の第三者と契約者で最終確認をして、
契約完了。
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こんなに厳重なのは訳があって。
実はその後の別の電話会社の仕事で知ったんだけど、
イッパ・クレストは2004年くらいに、
ブラックリストに載っていたんだよ。
つまり、
別の電話会社を名乗り、
詐欺まがいではなく詐欺そのものの営業をする奴が、
はっきりと存在していたわけ。
その頃たぶん指導を受けたんだろう。
だから、2005年のこのとき、
ここまで一つの契約に慎重になっていたと、
僕は推測してる。
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そして、
若奥様と契約を進める。
まずサインをもらい。
そして、
簡単に注意事項を伝えて。
「インターネットは……問題ないですね。
あと、黒電話でも無いですね。
そして、ガス検診サービスと共存が出来ませんが、
それは今使われて無い方が多いですし大丈夫ですよね」
「ガス検診ですか?
利用してます……」
ヤバイ。
「ガス検診は昔の仕組みならまだしも、
今は、問題ある状態になると自動的に止まるので、
現在ほぼ必要ない仕組みです。
この機会に解約してみてはいかがでしょう?」
「………」
「もう、大丈夫ですって…」
ダメダ。
若奥様のテンションが…。
「すいません。
やっぱり、主人と相談してから、
決めさせていただけ無いでしょうか…」
……………。
つづく。