・目次
この物語は現実を基にしたフィクションです。
登場人物名は仮名です。
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やすしが語ってくれた、
岩越店長の末路。
「家はなくなって今アパート暮らしだよ」
………前に聞いた話だと、
売ろうと思ったとき、
抵当権とか何とかの関係で、
買い手がいたのに売れなかったんだよな。
となると今手放せたとしても、
買い叩かれている可能性は高そうだ。
その欲しがっている買い手に売れなかったら価格下がるしな。
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「奥さんは今、
近くのスーパーでバイトしてる」
………。
コンビニの奥さんだと、
基本的に正~準社員レベルの月収。
店の規模にもよるけど場合によっては一流企業並み。
それが賃金の安い横須賀のスーパーのバイトになったんだから、
どう考えても奥さんの収入は半減、またはそれ以下だ。
「岩越店長は知らないけど…。
何か働いているとは思う」
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典型的な商売失敗パターン。
伊勢左木店を出店しなかったら、
避けられていたのだろうか。
たぶん、避けられなかったろう。
業界一位の店が近くに出店する運命は変わらぬままだし。
ただ、伊勢左木店の経営で背負った莫大な借金は、
なくなっていただろうから、
家まで取られる事は避けられたのでは。
………
やっぱり猿宮さんの話を思い出すと、
【商売を失敗する】という視点は、
一切無かったよなぁ…。
まああの人の場合、
奥さんが高給取りだから、
多少の失敗くらいならやり直せるんだが。
やっぱりその点でも猿宮夫妻はかなり勝ち組だな。
でも、そうそう恵まれている人ばかりではない、ってこと。
商売を始めるときはリスクもちゃんと考えないとダメダ。
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僕
「やすし、色々教えてくれてありがとう。
正社員になれてよかったね。」
「yosiもゲームコーナーの仕事、
充実してるようで何よりだよ!
で、俺が気に入ってるのは、
グランツーリスモシリーズなんだけど…」
僕は車ゲームのことをよく知らないけど、
ゲーム雑誌をいつも読んでるのでほとんどのゲームの、
簡単な知識はある。
いつものように表面的な話題でお茶を濁し…。
「そろそろ行かなきゃ!
またね~」
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そしてアキマサにも会った。
彼は出勤中だったので、
あまり話は出来なかったが。
「猿宮さンから、
店に来なイかと誘われタよ。
断っタけどネ」
どうやら、
横浜みなとみらい地区のコンビニ勤務が、
うまくいってるらしい。
何よりだ。
やっぱり猿宮さん、
僕らの力を借りたいというよりは、
【あいつらなら安く使える】という意識の方が、
強かったんじゃないだろうか。
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そして、この頃携帯電話が壊れて、
別のキャリアの新電話番号を獲得したので。
コンビニの仲間の連絡先は全て失った。
付き合いも一切無くなった。
みんな僕の自宅の電話番号は知らないし。
そしてコンビニ勤務時の記憶は、完全に無くなっていった…。
次回最終回。